京急イチの迷車両!?608編成
みなさまこんにちは!ひきあげです。
昨日、9100形についての記事を投稿させていただいたところ、好評の声を聞かせていただきました。応援ありがとうございます🙇♂️
まあ前置きはこのくらいにして本日は京急の中でも異彩を放つまさに「迷列車」、608編成をご紹介させていただきます。
アクセス特急として運用されている608編成
まずは600形の形式自体の説明から。
京急600形は旧1000形初期車の置き換え用として導入されていた1500形1700番台を足回りはそのままに現在の1000形でも続く「京急バルーン」といわれる丸いデザインの車体を初採用。車内には日本初となる可動式座席「ツイングルシート」を搭載し日本の地下鉄に直通する車両の中で初めてのオールクロスシートの車両です。(当時)
従来の新型車両、1500形1700番台
連結器に近い部分にあるギザギザのような「アンチクライマー」など京急伝統のものもバッサリ捨てた斬新なデザインは当時、鉄道ファンや沿線民の間で話題になったようです。
登場時はワイパーカバーに「600」の切り抜きはなくグレーに塗装されていました。その姿やツイングルシートが実際に可動している様子の動画がYouTubeにありますのでよければ見てみてはいかがでしょうか。
そんな600形は1994年から1996年にかけて1次車から4次車、8両8本(601編成〜608編成)、4両6本(651編成〜656編成)が投入されました。
8両編成の600形は以前京急で唯一「停車駅予報装置」というものを設置していました。これがなぜ必要なのかというと600形8両編成はオールクロスシートであるなどの理由により空港間アクセス列車「エアポート快特」「エアポート特急」「エアポート快速」充当列車に大抜擢。京成本線高砂以東を走行するには原則として停車駅予報装置が設置されていないと走行できなかったので京急では600形のみの設置となりました。都営5300形、京成3700形、京成3400形、京成3000形3001編成とともに羽田空港〜成田空港間を走行していました。
2010年に成田スカイアクセスが開業した後は10次車以降の1000形(1121編成〜)や3050形とともに成田スカイアクセス線経由で羽田空港と成田空港を結んでいます。(現在では10次車以前の1000形や1500形もアクセス運用に入っていますが今回は割愛)
もちろん、三崎口・京急久里浜〜青砥・高砂間の快特や羽田空港〜新逗子(現在の逗子・葉山)間のエアポート急行でも活躍しています。
4両編成は本線普通や2本組み合わせた8両編成のエアポート急行や快特、8両編成と連結し快特や特急の増結車などで活躍しています。過去には終夜運転で京成金町への入線も果たしたとか…
まあそんなわけで、地下鉄線内でオールクロスシートの車両が走り車内サービスが向上しました! とは一概に言えないようです…
ツイングルシートは座席を可動するためには安全性の都合上、2100形のように一度客を外に出さないといけません。
2100形のように京急線内だけならまだしも600形は地下鉄直通車両。他社線内では基本ツイングルシートは固定、補助席も使えなかったそうです。(現在でも補助席は京急線内以外では使えない)
また乗客目線でもツイングルシートは座席を可動するような仕様となっているため可動座席はモケットが薄く、座り心地が良いものではなかったようです。
1〜3次車で採用されたツイングルシート。Wikipediaより引用
まあそんなツイングルシートは事実上失敗に終わり、608編成と4両編成6編成の4次車では車端部ボックスシートと同じタイプの固定式の座席が採用されます。
600形4次車の内装。Wikipediaより引用
ちなみに2002年度より座席の張り替えを兼ねたツイングルシートの座席固定化工事を進めていたようです。
ですが2005年度より混雑対策やツイングルシートの管理に手間がかかっていたことを理由に次車関係なく現在のように車端部を除きすべてロングシート化されてしまいました…
また、座席以外にも4次車からは大きな変更点が。
やはり大きいところはパンタグラフの変更。3次車までは1500形1700番台と同様に菱形パンタグラフが搭載されていました。ただ、4次車では京急で初めてシングルアームパンタグラフを採用しました。
あとは機器構成の変更。4両・6両・8両の組み替えに対応するため1C8Mから1C4Mに。MT比も3:1(6M2T)から1:1(4M4T、4両編成は2M2T)へと変更されています。
しかしMT比を下げてしまうと京急の高速・高加速運転に支障をきたしてしまいますからその分モーター1つあたりの出力が上がっています。しかしモーターの個数が少ないですから雨天時には特に空転しやすくなっているようで、乗り心地が悪くなってしまっていたそうです。
また、やはりモーターの個数が少ないためか基本的に京急の車両の加速度は「3.5km/h/s」となっていますが600形4次車のみ「3.3km/h/s」となっています。ただ運用に支障はありません。
このように1〜3次車と4次車では性能などに大きな違いがあることが分かったかと思います。
さきほど、そんな4次車は608編成と4両編成6本が存在するとお話ししました。
勘のいい方と京急ファンの方は気付いているかもしれませんが、8両編成の600形4次車は608編成しかいないのです。
分かりやすく言うと8両編成のシングルアームパンタグラフを搭載した600形は608編成しかいないということですね。
では、なぜ609編成は登場しなかったのでしょうか…
実は608編成が製造された1996年ごろより608編成の608-1号車に転換クロスシートなどを設置してクロスシートの耐久性などを調べる試験が行われていました。その試験などにより登場したのが2ドアで京急のフラッグシップともいえる「2100形電車」。
こちらは2ドアで2000形を置き換えるために投入された電車ですので地下鉄直通は考慮されておらず、600形とは導入目的が違う電車です。(もともと本線A快特、2000形の置き換え用に600形を製造し2100形をエアポート快特に導入する計画もあったようですが今回は割愛)
そしてこちらの2100形を製造するため600形の製造は一旦お預けに…
ですが2100形投入後は600形ではなく"2100形の車体をベースにした"3ドアロングシートの地下鉄線直通用新型車両「新1000形」が導入されました。
そして、再度600形が増備されるということはありませんでした…
京急新1000形(現在は1000形)
このようにして600形、中でも600形4次車は少数派の異端児となりました…
普段ならこの辺でおしまいですが京急唯一の迷編成、608編成のすごいところはここからです!
現在ではこの問題は解消されてしまいましたがそれはずばり
「同じ編成に2つのインバータが搭載されている問題」
です。
電車のインバータは編成単位で揃えられているのが普通です。
ですがこの608編成は先ほどのクロスシート試験のように試験車としての一面もあり、608-1、608-4は東洋電機製造製のインバータ、608-5、608-8は三菱電機製のインバータを採用しました。そのためインバータの違いにより前後衝動が酷く乗り心地が悪かったそうです。
そのためもともと三菱電機製のインバータを搭載していた651編成と608-1〜608-4号車の間でインバータを変更。現在では乗り心地も多少改善されています。
いかがでしたでしょうか?
広範囲で活躍する京急600形。失敗したクロスシートや少数派であるなどの様々な過去がありますが、ぜひ608編成、ひいては京急600形にご乗車になる際は今回の話を是非思い出していただけると幸いです。
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では次回のブログで。さようなら!